コーティング加工は、金属製品の長寿命化・性能向上などを目的に、幅広い産業分野で活用されている。
とくに、炭素を主成分とする非晶質のカーボン物質膜であるダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜は、耐摩耗性・非凝着性・低摩擦性に優れ、アルミ切削用ドリルなどの工具や、プラスチックやガラスレンズ、アルミ部品向けの金属、クラッチプレートやピストンリングなどの自動車部品にも広く用いられ、市場規模は年10%超の拡大が進み、DLC成膜装置の高品質化・高速化のニーズも高まっている。
ハイブリッドイオンプレーティング装置SPS-2020は、イオンビームで成膜物質を真空中にたたき出すスパッタリング法と、プラズマ中に成膜物質を含むガスを注入して膜を生成するPCVD法を融合したハイブリッド成膜技術を用いており、硬さや厚みなど成膜の品質向上に成功。
大電流のHCD(ホローカソード放電)式のプラズマガンを2基搭載し、高密度のイオンビームを照射することでイオン化率を上昇させ、従来機比約1.5倍の成膜速度を実現した。
また、独自のプラズマ制御技術と機械構造の採用で、均一な厚みで安定した成膜ができる。
今後も、低摩擦・耐摩耗膜の普及をはかり、拡大するニーズに対応すべく、従来型の合金膜成膜ソフトのラインナップと装置バリエーションの拡充をすすめていく。
高速成膜
- 不二越保有技術のHCDプラズマガンを2基搭載し、高密度イオンビームを生成させて、効率的なイオンクリーニングが可能。
また、ターゲット付近のイオン化率を上昇させることで、DLC成膜速度を従来機の約1.5倍まで向上させ、生産効率を改善。
ハイブリッド成膜により膜質品質を向上
- イオンビームによるスパッタリング法と、プラズマ中に成膜物質を含むガスを注入して成膜するPCVD法を融合したハイブリッド成膜技術で、硬度や膜厚などの成膜品質を向上。
安定した成膜品質
- 独自のプラズマ制御とターゲットの最適配置により、ばらつきの少ない安定した成膜品質を実現。
豊富なバリエーション
- TiN(錫)、CrN(一窒化クロム)、TiAlN(窒化チタンアルミ)などの硬質膜の成膜にも対応可能。
処理時間
密着性が増したハイブリッド成膜
仕様
型式 | SPS-2020 |
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成膜 有効範囲 |
Ø500×500h |
処理量 | 200kg(N.C.) |
寸法 | W5,000×L4,500×H3,000mm |
重量 | 4.0ton |
電源 | 3Ø 200V50/60Hz200kVA |
冷却水 | 20℃以下の上水 0.1Mpa 最大30L/min. |
使用ガス | Ar、C2H2、N2、LN2、Air |
成膜可能膜種
膜種 | 標準膜厚 (µm) |
膜硬度 (HV) |
摩擦 係数 |
耐熱 温度 (℃) |
特長 | 主な用途 |
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DLC-S | 0.5〜3 | 300〜1500 | 0.1 | 300 | 低摩擦係数 耐摩耗性 |
切削工具 金型 摺動部品 |
DLC-H | 0.5〜1.5 | 1500〜3000 | ||||
Me-DLC | 0.5〜1.5 | 500〜1500 | ||||
TiN | 2〜4 | 2000〜2800 | 0.6 | 400 | 耐摩耗性 広い適用性 |
切削工具 金型 |
CrN | 2〜4 | 1100〜2000 | 0.5 | 700 | 耐熱性 非凝着性 |
金型 摺動部品 |
TiAlN | 2〜4 | 2200〜3000 | 0.7 | 850 | 耐摩耗性 耐熱性 |
切削工具 |
スパッタ法でTiSi中間層を成膜し、PCVD法でDLCを連続成膜する。Tiが基材と中間層、Siが中間層とDLCの密着性を確保する構造で、SEMによる断面図のとおり密着性の良い膜を施すことができる。